空と海と道路

昨夜。

書くのをためらった記事が
あります。



（弱いスポットライトがあたる、組んだ指先）

夜中に思い出したH君の
体験談。

◇

彼はある夜

おろしたばかりの新車にて

午前2時に
試し運転をくわだてました。
（仕事の性格上、その辺りが
一番自由なんでしょうか。

単に…夜中好き。なダケの気もいたしますが。ふ）


川之江から雲辺寺に抜ける道路。

ここは私も通ったことがありますが、

そびえる竹林。のイメージしかありません。


さてH君。

朝日を浴びた爽やかな事務所にもカカワラズ…

そこだけ
おどろおどろしい「陰」ができた中、

声を落とします。


「ダムがあるんですよね。」

いきなり顔の半分が切り絵のように
黒くなった彼は続けます。

ごくり。

静かな空間にて
（隣のロビーには、
社員がたくさんいるはずなのに。）

私の喉の音が響きます。


「私。友達の運転する車の後ろをついて走ってたんですね。」

彼も一人。
H君も一人です。

「ダムを通る時…」

ぐわぁぁぁ！
もう言わんでくれ。

いや言って。

指の間から

語り部を窺います。

「僕の車は新車だったから

トランクにはまだ何も入っていないんです。」


「なのに！」

ひくっ
私、その瞬間、息 止まりました。

失禁も、もしかしてやらかしたかもしれんです。

ふ…


「トランクでね、

どぉん！どぉん！と

凄い音がするんですよっ」

・・・・・

「ダムを過ぎたら音は

ピタッと止まりました。」

「私ね、猛スピードで前の車を追い越して

斜めに停め

友達に叫んだんです。

おい！

今の…凄かったやろ！」
って。


友達

「え？ 何が？」




彼はその後、その道は夜通らなくなったそうです。


近辺に、お客さんおるらしいんやけどねっ。