空と海と道路

早朝5時50分。

「今朝は誰が宿直明けかのぅ…」

ミイラのように包帯を巻いた私は

そんなことを考えながら

のんびりドアを開けました。


びゅるっ！


ん… びゅるっ？

私の目の前を

一陣の「疾風」がかけぬけました。

余りに早すぎる為、

コマ送りにしてご説明申し上げますと…


「疾風」と見えたのは

実は「カニ」。

何かにトリツカレタかのように

掃除機をかけまわる…

カニでした。


彼の巻き起こす旋風に、

私のミイラ包帯はほどけ、
端っこをヒラヒラさせて

掃除機に負けぬよう大声にて挨拶を。

「お、おはようございます！」

哀れな傷病兵をチラッとイチベツした彼は

「ん！ん！おはようさんっ！」

また掃除機と共に走り去ります。


ヤレヤレ…。
落ち着かぬ朝だのぅ。

私は、トイレ掃除を後回しに
（弾丸掃除機野郎は、トイレまでがーがーかけとりますから）

目だけを出してミイラ包帯を巻き直し、
中華鍋と松葉杖を揃えた私は
（ちょとイミフメイデスガ）

他に算段がないので

ショウガナク仕事に取りかかります。


人が仕事しよる横で

イキナリ愛機の掃除機をばたっと落とし、



今度は「モップ」をタズサエ

外に走るカニ。
（註：バケツを使える水道は外にあります）

あー
今度はモップかよ…。

まだまだ冷え込む野外にて
モップバケツをがしがし踏み
水を切ったモップを

マサイの戦士の槍の如く

神々しく捧げ持ち

カニは
ひたすら床を磨きます。

あー
あー
あー

ええ加減に席についてくれ〜だ。


私は見るともなくその光景をカイマミ…

天を仰ぎます。


ようやく帰ってきたカニ。

今度は事務所のどっかの荷物に足をとられ

「あふっ！」

「あぁっ」


PCに見入るミイラの私が
聞いてモイナイノニ

「いや、こりがねぃっ！」

無視。

きっと、事務所に「突然」湧き出た「昭和新山」だろ…

ふ。

皮肉に嗤いながら


ようやく「落ち着いた」カニ。

彼の「定位置」は

彼のPC前です。


8時半に出勤してきた、
フェミニンY嬢。

非常に落ち着いて

「ジムショナイの世界を

逐一頭のフォルダに収めている」彼女。

「こないだはね

ジョウム（もはやカタカナです）ね。

何かに驚いて

コーヒーを辺り一面にこぼしたんよ。」

・・・・・

カニは

いつも

「ナニカ」にオドロイテいます。


だんっ！
「ええ人なんやっ！」

デスクが響くぐらい
手をついて…

獣は言います。

「ええ人なんやっ」
の

次が続きません。


「ま、とにかくエエ人ね。」

カタカナになります。

だんっ！

うんうん。
カニは…

ええ人なん…よねぃ？

ふっ