空と海と道路

夢を見た。

実はこれ、一昨年に見た夢。

最近、この夢をなぜかよく思い出します。



私は昼間の水色のカットソーとスカートのまま、夕暮れの道を歩いています。
街灯もない道は余りにも暗く、その時刻はまだ開いてるはずの店は電気を消している。
闇に慣れていない私は、おぼつかない足取り、ハイヒールで用心深く歩みます。

道の片隅には、朝見た老女が同じ場所に座り込み、ぶつぶつ呟きます。

このまま進めるのか…？不安になる私の横に車が停まります。
「送っていこか？」
いや要らん…。

私はそのまま砂に足をとられながら歩み続けます。

辿り着いた先は、家の近所であるはずの駅の裏。
あ、ここは見たことがあるな。安心する光景も、実は夢でしか見たことのない駅裏。
実際には存在しない場所。

私は明かりに勇気づけられて歩きます。

長屋のように連なった、淋しい一連の店。
全てが黄色い照明にちらちら照らされ、ドアを開けたら別の店に繋がります。
店にしか繋がらない通路。
開けても開けても…同じような店が現われるのです。

そこには決まって常連のみが座るスツールしかありません。
座っている、店には馴染みであるはずの客は、私をうさん臭そうに見つめます。

黄色い明かりのもとで。

私は次々にドアを開け、微笑みかけてくれる目を探します。。

「今夜はもう終わりです。」
出口のドアを探す私に、最後の店の店員は告げます。

私は、すいません。と謝りながらドアを開けたらそこは露地。

家に帰ろう。と念じながら足を踏み出します。

夕暮れも終わり、外は後ろからの排他的な黄色い明かりが斜めに伸びるだけ。

辿り着く道は行き止まり。
唯一そこで刹那的に知り合ったのは一組の親子。
「行き止まりですね。」
「ええ。だけどこの子達は知ってる子達だから…道を教えてくれるはずです。」
暗闇に化そうとする行き止まりの道で、なぜか子供達は遊んでいるのです。

あぁ そうか。貴女達は帰れるのですね？

私は作った笑顔で見送ります。

いつしか足元には数匹の野犬。
唸る彼らの目は緑色のデジタル表示。緑の中に黒いゴシックの目が二つ。

私は、暗い夜道を歩く為、野犬を脅す為、何かの武器を探さねば。

見つかったのは祭りの団扇。
ないよりはまし。

早く駅の表に出なければ。

焦る私はまた再び黄色い明かりの中へ。
もはや客もいなくなったあの長い筋へ戻ります。

あからさまにストレンジャーを見つめる目に、ドアを開ける度に出会い
さっきは閉店だと言ったくせに、また別の客が腰掛け、私をじろじろと見ます。

嗚呼


「帰る家があるから、旅に出るのです。」

老師の言葉が、何もないドアに反響する。


帰る家。

そうか…私は「帰りたい」のだ。

私は気づきます。

夏にも関わらず、しめ縄をつけた銭湯の看板が私を誘い…
廃墟に。

デジタルの目が私を追います。

私は…拳を握り締めた格好で目覚めました。


のが2年前。

今。

また迷路を歩きたくなったんですな…。
笑

今夜。とりあえず

この、夢の続きを見なくては。
そういう、謎の強迫観念が…。

なぜなんだろ。笑