空と海と道路

先日のカニ報告です。

注釈：我が社の常務。
いつも一人でウロタエている男51歳。


2階のヒミツの小部屋から、休憩を終えて降りてきた私の目に

バタバタ走り回るカニの姿が入りました。

ぎ ガチャン！
自分のロッカーを閉め、
またバタバタ。

非常に急いでいるご様子。


「ほ、ほならねぃっ！」

出て行ってしまいました。
…心なしか、発音が曖昧です。


静かになった事務所にて、私は獣に訊ねました。

「なに？ カニ、出張？」


「は、や。」


は？

「歯が痛いらしいわ。

お～お～。
口押さえて行っとるがな～」

ブラインドの隙間から覗く獣は笑うとります。


しばらくして、
カニは歯医者さんから帰ってきました。



かなり
寡黙な男と変わり果てて…。


ずぅっと口を手で押さえとります。

食後、爪楊枝をしーはー使うおばさんみたいに。笑


「常務！痛むんですかっ？」

ニヤツキを表情に出さないよう努め、私は訊きます。


「ん…いにゃ」

何を言うとるのか分かりません。

その時、電話が同時に何機か鳴り始めました。

私も獣も出ます。

カニも、口を押さえながら出ます。

「ごにょ。ごにょごにょ！」

…出んでええわ。


何時間か経ち、ようやく手を離したカニ。


今度は口が曲がっていました。

片方だけを噛みしめ、痛みを我慢している為。でしょうか…

「イブ。持ってますよ？」

「しーっしーっ（噛みしめて息をしている音）
いにゃ、歯医者さんがくれたからにぇぃ…」

口が、底辺の一番長い直角三角形になってしまいました。



そんな日の夕方、
郊外勤務地から戻ってきたB型ベティが

「何、食べよんか思た…」

カニの口元をこっそり物真似します。

口元を手で覆い、モゴモゴ。しーしー。

「ひどいヤツ～!」

と、密かに腰を折り曲げて爆笑する私。



この日のカニの背中には…


シブい黄昏の哀愁が漂っとりました。。